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酒井 隆史 通天閣 決定版 上下巻セット: 新・日本資本主義発達史
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単行本刊行当時、この分厚い本を営業鞄にぶち込んで、客先を廻っていた。僕はビル管理会社の営業で阿倍野のマンションを担当していた。この本には僕の知りたいことが山ほど書かれていた。上司からはそんな本を読む暇があったら宅建やビルクリの勉強をしろと言われ続けたが頑なに本書を手放すことはなかった。阿倍野のデカいマンションの理事長が80歳くらいの人で、会うたびに僕は営業トークではなく『通天閣』の話ばかりしていた。やがて理事長から「きみは自分の会社の商材も売らずにずっと小野十三郎や逸見直造の話をしとる、けったいな奴や、気に入った!」と言って色んな仕事を発注してくれた。会社に戻って報告すると社長が「あそこの理事長はかなり難しい人やけど、どうやって攻略したんや?」と言ってきたので「アナキズムやデモクラシーについて話してただけです」と答えた。そういう意味でも忘れられない一冊。本当に面白い。保坂和志が『未明の闘争』や『鉄の胡蝶』や『読書実録』で執拗に引用しているあのセンテンスも本書の注釈に書かれている。
この社会の核には「悲しみ、懊悩、神経症、無力感」などを伝染させ、人間を常態として萎縮させ続けるという統治の技法がある。(本書より抜粋)
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